東京都では、東京と他の地域が、それぞれの持つ力を合わせて、共に栄え、成長し、日本全体の持続的発展へとつなげていく「共存共栄」を目指しています。

そのために、東京都では、東京だけでなく他の地域の発展にも結びつく様々な施策に、各自治体と協力して取り組んでいます。その取組の一環として、全国の自治体へ直接訪問させていただき、東京都との連携や政策全般にわたる意見交換を積極的に行っています。

1月21日(火)に和歌山県を訪問させていただきました!

JR和歌山駅へは、新大阪駅から特急電車で約1時間10分で到着します。
和歌山県との意見交換会は午後に予定されていたため、午前中はまず、JR和歌山駅前からバスに30分程乗り、紀三井寺公園陸上競技場へ視察に向かいます!

紀三井寺公園陸上競技場は、和歌山市内に位置する「紀三井寺公園」内にあります。
紀三井寺公園は、陸上競技場のほかに野球場、テニスコート、トレーニングルーム、子供広場などスポーツ施設が充実した、和歌山県の総合運動公園です。
また今年度、情報発信による連携事業として和歌山県と東京都で実施した相互PRでは、紀三井寺公園内に「東京2025デフリンピック」「東京2025世界陸上」のポスターを掲出いただいたほか、チラシやピンバッジも置いていただき、大会のPRにご協力をいただきました。

和歌山県との相互PRを実施中!!:https://www.kyozon-kyoei.metro.tokyo.lg.jp/local-government-project/Coexistence-tourism/post-345/

今回訪問した陸上競技場は、昭和39(1964)年に完成し、19,200人の収容が可能な競技場です。「第26回黒潮国体」、「2015紀の国わかやま国体」やJリーグの公式戦など様々なスポーツイベントが開催されてきました。また、陸上トラックは個人で利用することも可能で、地元の方々が練習に励む場として開放されています。

▼2015紀の国わかやま国体のマスコット・和歌山県PRキャラクター
「きいちゃん」が出迎えてくれます▼
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そんな紀三井寺公園陸上競技場を訪れた目的は、こちら!

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木材をベースにした温かみのある展示ケースの中に、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のマスコット、ミライトワとソメイティの姿が!
実はこの展示ケース、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の選手村ビレッジプラザで使用された和歌山県の紀州材を、大会終了後に「レガシー木材」として活用したものなのです。

▼オリンピック・パラリンピックのエンブレムがあります▼
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東京2020大会のレガシーが今もこうして息づいていることを知るとともに、東京都と和歌山県のつながりを感じられ、とても感慨深かったです。

紀三井寺公園:https://www.kimiidera-park.com/#gsc.tab=0

続いてバスで和歌山市の中心部に戻り、コワーキングスペース兼シェアオフィスの「Park Biz WAKAYAMA」を視察させていただきました。

和歌山県は、平成29(2017)年度から全国の自治体に先駆けて「ワーケーション」の取組を実施してきた「ワーケーション発祥の地」です。
首都圏や京阪神からのアクセスの良さと、美しい海・山・川の大自然や1000年以上の歴史・文化を誇る世界文化遺産の「高野山」「熊野」などの魅力、そして官民一体となって整備しているビジネス環境の良さ和歌山県の強みです。
和歌山県では、ワーケーションを「価値創造ツール」と位置づけ、和歌山県を訪問した方々に対して、非日常での活動を通したイノベーション創出の機会の提供に取り組んで来ました。また、ワーケーションを受け入れる地域側においても、訪問者との交流を通じて様々な知見や視点を得ることで、地域課題の解決や新たなビジネスが生まれることが期待されます。

Park Biz WAKAYAMAは、ワーケーションに利用できる民間の拠点の1つで、南海和歌山市駅から徒歩10分、和歌山県庁、和歌山市役所が徒歩圏内という場所にあります。
中に入ってみるとまずその洗練されたオシャレなデザインにびっくり!
それもそのはず。実はこの施設の内装は、隈研吾建築都市設計事務所によるデザインなのです!

▼1階にはカフェスペースも▼
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▼2階打合せスペース▼
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1階は打ち合わせや50人規模のイベントも行うことができるコワーキングスペース兼イベントスペース、2階はシェアオフィスになっています。コワーキングスペースはドロップイン利用も可能なため、県外から出張で訪れたビジネスマン等の利用が多いそうです。イベントスペースには大型スクリーンも設置されており、セミナーや懇親会等の開催に利用できるほか、運営会社主催のイベントも月2回程度開催されるとのことです。
こんな洗練されたオフィスで働いたら仕事の質もあがりそうですね。羨ましい...。

Park Biz WAKAYAMA以外にも、和歌山県内各地にワーケーションの拠点となるワークプレイスが数多く設置されており、ワークプレイスや宿泊サービス等、県内事業者が提供しているワーケーション向けのサービスは、和歌山県が「Wakayama Workation Networks」において紹介しています。
和歌山県やワーケーションにご興味のある方はぜひご覧ください!

Park Biz WAKAYAMA:https://parkbiz-wakayama.atomica.co.jp/

Wakayama Workation Project:https://wave.pref.wakayama.lg.jp/020400/workation/index.html

視察をさせていただいた後はランチタイム!
和歌山名物の和歌山ラーメンを頂きました。
醤油とんこつベースのラーメンは、クリーミーな味わいでとても美味しかったです。
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昼食後、日本100名城の1つである和歌山城を横目に徒歩で和歌山県庁に向かいます。
和歌山県庁に到着するとこんな看板がありました!なんだかワクワクします!
08宇宙看板.jpeg和歌山県庁の本館は、昭和13(1938)年竣工の非常に歴史の重みを感じることができる建物です。
昭和20(1945)年の和歌山大空襲では和歌山市内の多くの歴史的建造物が焼失しましたが、和歌山県庁本館は被害を免れたため、外観を始め竣工当時の姿を色濃く残しています。
平成25(2013)年には国の登録有形文化財に指定されました。

▼和歌山県庁本館▼08和歌山県庁.JPG

そんな和歌山県の歴史に思いを馳せながら県庁舎に入ります。
1階エントランスまで和歌山県庁の職員の方にお迎えいただき、会場へ移動し、意見交換の開始です。
意見交換は、企画部と商工労働部の皆様にご対応いただきました。
お忙しい中お時間をいただき誠にありがとうございました。

今回は、東京都が実施する連携事業をご紹介するとともに、和歌山県の成長産業等について意見交換を行いました。

和歌山県は、農業産出額の約7割を果実が占め、みかん、梅、柿の収穫量が全国1位の「果樹王国」です。製造業においては、化学、鉄鋼、石油などの基礎素材型産業の割合が高く、製造品出荷額の約6割を占めています。また、地場産業も古くから栄えており、繊維関連産業や有名100円ショップの商品を始めとする日用家庭用品など、全国シェアの高い産業が数多くあります。
しかし近年、少子高齢化による人口減少や、県経済を支えてきた重工業におけるカーボンニュートラルや脱炭素への対応に伴う事業縮小などが課題となっています。

和歌山県では、課題に直面する現状を変革のチャンスと捉え、和歌山県の地域特性を生かしながら円滑にGX成長投資を取り込み、脱炭素先進県へ飛躍することで、30年後には将来世代にとって魅力的な地域を実現することを目指して「わかやま成長産業開拓ビジョン」を策定しました。
GX(グリーントランスフォーメーション)とは、化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギー中心の産業構造に移行させることにより、カーボンニュートラルと持続的な経済成長の両立を目指す取組です
「わかやま成長産業開拓ビジョン」では、成長産業の開拓によって、脱炭素先進県の実現とともに魅力的な働く場所・機会を創出し、和歌山県の魅力を高めていくことを目指しています。
候補となる成長産業の条件として、①世界的な市場成長の見通しがあること、②和歌山県との歴史的・地理的な親和性、県内産業構造との親和性があること、③魅力的な雇用拡大の可能性があること、④周辺産業への波及効果、産業集積の可能性があること、⑤国内・アジアの状況を踏まえ和歌山県が先行拠点となる可能性があること、⑥政府支援の見通しがあること、⑦将来世代にとって魅力ある仕事であること、の7点を設定し、戦略的な産業誘致を推進します。

成長産業の中には、既に和歌山県内で動き始めている具体的な産業もあります。

カーボンリサイクル燃料】
カーボンリサイクルとは、CO2を資源として捉え、様々な製品や燃料に再利用することでCO2の排出を抑制する取組です。カーボンリサイクル燃料の実用化は、海外から輸入する化石燃料に依存する日本のエネルギー需要構造に変革をもたらす可能性があり、脱炭素だけでなく、エネルギー安全保障の観点からも重要です。
和歌山県内では、既存の製油所のSAF(持続可能な航空燃料 Sustainable aviation fuel )製造拠点への転換が進行中です。
SAFはカーボンリサイクル燃料の1つで、廃食油などを原料とする航空燃料であり、航空業界において国際的なCO2削減目標が設定されたことにより、今後、世界的な需要拡大が見込まれます。
既存の石油精製設備の活用が可能であることに加え、需要地となる関西国際空港や南紀白浜空港からのアクセスが良好であること、港からの海上受入・出荷が可能であることから、和歌山県との親和性が高い産業であると言えます。
和歌山県は、国、地元市、事業者と協議し、製油所エリアを、カーボンニュートラル社会の実現と地域経済の発展に貢献する「未来環境供給基地」としていくためのグランドデザインを公表しました。本事業に対しては、和歌山県としても非常に期待感が高いとのことです。

蓄電池】
蓄電池は、自動車等のモビリティの電動化における最重要技術であり、脱炭素社会の進展に伴って世界的に需要が拡大しています。日本政府も競争力ある蓄電池製造サプライチェーンの確立に向け、2030年までに150GWh/年の国内製造基盤を確保することを目標にしています。
和歌山県内には、最先端の新型車載用バッテリーの生産拠点が立地しており、令和6(2024)年に次世代高容量規格のバッテリーの量産準備が完了し、量産に向けて進めているところです。
蓄電池のサプライチェーン構造は、化学工業や金属製品製造業といった和歌山県内の産業構造との調和性もあり、協業や参入が期待できる産業です。
また、和歌山県だけでなく関西全体で蓄電池の産業集積が進められており、関西エリアで約1万人の雇用が見込まれることから雇用分野でのプラスの効果も期待できます。関西エリアで推進している人材育成・確保の取組に和歌山県内の工業高校も積極的に参加しています。

再生可能エネルギー(洋上風力)】
再生可能エネルギーは、平成23(2012)年の再生可能エネルギー特別措置法の制定により導入が進み、和歌山県では令和4(2022)年度の再エネ率が国を上回る約33%と高い水準にあります。
一方で近年、大規模ソーラー発電や陸上風力発電による環境や災害への影響が懸念されていることから適地が減少しており、陸上での再生可能エネルギーの伸び率は鈍化する見通しです。
そのような状況で期待されるのが洋上風力発電です。
和歌山県は、特に御坊市沖など近畿地方でも随一の洋上風力の発電に適した風況を有しています。令和6(2024)年に国の洋上風力発電の準備区域にも追加されており、今後は促進区域に指定されることを目指し、10年、15年先を見据えて和歌山県としても取組に力を入れています。
洋上風力発電は、発電設備の構成機器・部品点数が非常に多く、製造段階で多くの部品メーカーに参入の余地があります。また、発電設備の設置や、設置後のメンテナンスには地元企業の関与が不可欠です。非常に裾野が広い産業であることから、新たな雇用の創出が期待できます。

ロケット・宇宙産業】
宇宙産業は、ロケットや衛星製造等のハード産業である宇宙機器産業と、衛星データ活用ビジネス等のソフト産業である宇宙ソリューション産業から成り立ちます。日本の市場成長率も高く、今後まだまだ成長余地があります。
実は、既に和歌山県には串本町に日本発の民間ロケット発射場があります。
ロケットは、地球の自転速度を有効利用することにより打ち上げ時のエネルギー効率を上げることができるため、東に向けて打ち上げます。また、北極・南極の上空を通過する「極軌道」で回る人工衛星は、南に向けて打ち上げます。そのため、東南に陸地や島がなく恒常的に無人の広いエリアがある場所が、ロケット発射場に適しています。
串本町は、本州最南端に位置し東と南に大きく開けた太平洋を臨む、全国的にも数少ない発射場に適した地形です。加えて、宇宙・ロケット事業に対する地元住民の理解と協力が得られることや、本州の工場からアクセスが良くロケットの運搬がしやすいことから、和歌山県はロケット・宇宙産業に最適の地と言えます。
和歌山県では、ロケット打ち上げをきっかけとした紀南地域活性化や宇宙教育推進のため、県立串本古座高校に全国初の「宇宙探究コース」を新設し、全国から生徒を募集し人材育成も進めています。
将来的には、串本町周辺にロケットや部品の製造工場、メンテナンス工場などを集積して、宇宙産業の一大拠点化を目指しています。また、宇宙産業の拡大に伴い、観光業の活性化や農林水産業の効率化・高度化といった既存産業の発展も期待されます。ロケットに携わりながら副業で農業に取り組むなど、多様な働き方の実現といった夢も宇宙と同じくらい広がります。

和歌山県は、魅力溢れる自然文化や豊かな暮らしとともに、脱炭素社会の中心産業の存在が将来世代にとっての誇りと希望の拠り所となることを目指し、将来世代に選ばれる和歌山となるべく、ビジョンを策定し取り組んでいます
現状の課題を逆手にとり、地域のポテンシャルを生かしてチャレンジしようという非常に前向きな熱意が感じられました。
地域課題の解決や新しいビジネスを考えるスタートアップ等にとっても、和歌山県が新たなイノベーション創出の場となるかもしれません。

「わかやま成長産業開拓ビジョン」:https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/063100/d00214841.html

和歌山県では、成長産業だけでなく既存の産業である林業の活性化にも取り組んでいます。
県土の約7割を森林が占める和歌山県は、森林資源に恵まれているものの担い手不足が厳しい状況にあります。
林業や紀州材のPRのために、セミナーの開催や、東京都のMOCTIONやWOODコレクション(モクコレ)をご活用いただいているほか、令和6(2024)年に包括連携協定を締結した吉本興業との協力によるPR動画を制作し、紀州林業の魅力を発信しています。
動画はYoutubeの和歌山県公式チャンネルで見ることができます!
林業や自然の中での暮らしにご興味のある方はぜひご覧ください!

人気芸人「見取り図」が和歌山でワイルドに林業対決!①~伐倒、造材、搬出編~:https://www.youtube.com/watch?v=SfTAdthKZcw

人気芸人「見取り図」が和歌山でワイルドに林業対決!②~山飯、山土場作業編~:https://www.youtube.com/watch?v=gLiGHAaDgCU

和歌山県公式チャンネル:https://www.youtube.com/@PrefWakayama

お互いの都県の状況や取組について大変活発な意見交換が行われ、当初の予定時間を超えて盛り上がりました。
和歌山県の皆様へ重ねて御礼申し上げます。
おかげさまで今回の訪問も、大変有意義な訪問となりました。

東京都は、全国各地との共存共栄を目指し、引き続き幅広い分野で連携を進めていきます。
次回の訪問レポートもお楽しみに!