東京都では、東京と他の地域が、それぞれの持つ力を合わせて、共に栄え、成長し、日本全体の持続的発展へとつなげていく「共存共栄」を目指しています。
そのために、東京都では、東京だけでなく他の地域の発展にも結びつく様々な施策に、各自治体と協力して取り組んでいます。その取組の一環として、全国の自治体へ直接訪問させていただき、東京都との連携や政策全般にわたる意見交換を積極的に行っています。
1月29日(水)に北海道を訪問させていただきましたので、その様子をご紹介します。
冬の北海道を訪れるのは初めてだったこともあり、飛行機が予定通り飛ぶか心配していましたが、羽田空港を出発して1時間30分強、無事新千歳空港に到着し、北海道庁のある札幌駅に向かいます。
当日は予想していたよりも寒さが緩やか(それでも最高気温が1度です!)で、雪もそこまで積もっていませんでした。車窓からの風景を眺めながら冬の北海道もいいなあと思っていると、あっという間に札幌駅に到着しました(後で北海道庁の方に聞いたところ、訪問時点では記録的な雪の少なさとのことでした)。
まずは意見交換前に昼食です。
北海道と言えば、海鮮、ラーメン、スープカレーなど、魅力的なグルメが盛り沢山。様々な選択肢がある中、今回昼食に選んだのはこちらです!
ザンギとは、鶏肉に下味をつけて揚げたものです(インターネットで検索しても、唐揚げとの違いは曖昧なようです)。大きなザンギが6個もついてくるボリューム満点の定食を選びましたが、アツアツジューシーな鶏肉がとてもおいしかったです。
満腹になったところで北海道庁へ向かいます。
北海道庁は札幌駅から徒歩で8分程度。地上を歩いての移動になります。
さて、意見交換です。
意見交換は、総合政策部と経済部の皆様にご対応いただき、大きく3つのテーマで意見交換させていただきました。
お忙しい中、お時間をいただき誠にありがとうございました。
まず、東京都が実施する連携事業をご紹介した後、北海道の主要施策をご紹介いただきました。
最近の北海道を取り巻く主な動きとして、以下のような内容が挙げられます。
令和6年6月 北海道・札幌市がGX金融・資産運用特区に決定、国家戦略特区に指定
令和7年4月 次世代半導体のラピダス社の試作ラインが稼働開始
7月 北海道庁旧本庁舎(赤れんが庁舎)リニューアルオープン
令和8年 北海道の宿泊税課税開始 宿泊税を財源とする観光施策の展開
令和9年 ラピダス社による次世代半導体の量産開始
苫小牧市内でソフトバンク社のデータセンター稼働
こういった大きな動きがあることから、これを好機と捉え、的確に政策を推進していくとのことです。
さらに、北海道には豊富な再生可能エネルギーが存在しており、再生可能エネルギーに関して国内随一のポテンシャルを持ちます。事実、全国1位の割合を誇るものとして、太陽光発電(23.3%)、風力発電(35.6%)、中小水力発電(9.8%)があり、地熱発電(12.5%)も全国2位の割合となっています。
こういったポテンシャルを活かし、GX産業の立地・集積や道内外への電力の安定供給を図るため、洋上風力発電や次世代半導体、海底直流送電線などの8つのGXプロジェクトを展開しています。また、単にエネルギーを供給するだけでなく、作ったエネルギーを次世代半導体やAIデータセンターで効率的に利活用する地産地消の取組も進めているとのことでした。
取組はそれだけに留まらず、日本の食料自給率に占める道産食材の割合を現在の24%から30%まで引き上げ、日本最大の食料供給地域として食料安全保障へさらに貢献していくための取組や、道産木材の活用を促進する取組、世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」に代表される縄文文化やアイヌ文化の振興、北海道にゆかりや想いのある個人・企業・団体が知恵や力を結集して課題を解決する「ほっかいどう応援団会議」など、北海道だけでなく日本全体の発展につながる幅広い分野の取組を進められているようです。
特に半導体の関係は、北海道大学をはじめとする大学や国の出先機関である北海道経済産業局、北海道庁が一丸となり、急ピッチで人材育成やインフラ、物流などの諸課題を解決するための体制や枠組みを整備しており、今後も最大限の支援をしていきたいと力強くご説明いただきました。
GXに関する取組:【公式】Team Sapporo-Hokkaido|北海道のGX
半導体関連の取組:次世代半導体産業立地推進ポータルサイト - 経済部産業振興局次世代半導体戦略室
続いてのテーマは、「東京23区と道内市町村との連携」です。
東京23区の特別区長会と道内144町村で構成する北海道町村会は、平成28年4月に「特別区長会と北海道町村会の連携協力に関する協定」を締結し、これまで特別区と道内町村間で多くの取組が実施されています。
例えば、荒川区と釧路地域で連携し、荒川区の小学生と保護者が釧路地域を訪れて様々な体験や地元小学生との交流を行う2泊3日のツアーや、港区と宗谷地域で連携し、港区民が現地で地域の方との交流や地域の仕事を体験する取組などが行われています。
こういった交流の取組によって、リピーターとしてプライベートでも遊びに行く方が生まれるなど、関係人口の創出・拡大やまちの知名度向上に寄与しているようです。
今後は、物販中心だったこれまでの取組を一歩越えて子供や若者などの人的交流を増やし、その土地ならではの歴史・文化を学べるような機会を増やすなど、23区と道内市町村が縁を大事にして両地域の将来につながるような取組を展開していきたいとの考えをお話しいただきました。
特別区全国連携プロジェクト:北海道町村会 - 特別区全国連携プロジェクト
くしろ地域と荒川区の連携事業:くしろ地域と荒川区の連携事業 - 釧路総合振興局地域創生部地域政策課
北海道宗谷地域と東京港区との連携プロジェクト:北海道宗谷地域と東京港区との連携プロジェクト | 北海道礼文町
最後のテーマはスタートアップ関係です。
北海道では、令和5年に札幌市や北海道経済産業局等と連携して「スタートアップ北海道」を立ち上げ、スタートアップの創出や集積の取組を推進しています。
「スタートアップの創出」としては、学生等を対象に起業意識を醸成するための取組や社会人等を対象とした起業に向けたアイデアを創出するワークショップ、専門家の伴走支援などの取組を行っています。専門家の伴走支援では、Tokyo Innovation Baseを活用いただいて成果発表報告会を実施しており、更なる支援等にもつながっているとのことでした。
「スタートアップの集積」としては、海外も含めた道内外からスタートアップを呼び込むとともに、自治体・企業とのマッチングによって事業を発展させ、ビジネスの更なる展開につなげる取組を進めています。
北海道にスタートアップを呼び込む上でのポイントは、北海道が唯一無二の実証フィールドである点です。北海道の広大な大地には、内陸部、海岸部、オホーツク海側、日本海側、太平洋側、牧草地帯、水田地帯など、環境のまったく異なる地域が広がっています。179にのぼる市町村それぞれが異なる行政課題を抱えており、その解決に繋がる技術や仕組み、アイデアなどをスタートアップが試す適地であるというわけです。
さらに、実証を進める中で生じた国の規制や制度上の問題点については、GX金融・資産運用特区の指定を受けたことによる規制緩和や、AI北海道会議*という枠組みを活用して規制改革につなげる仕組みもできています。
東京都のリソースを活用して具体化されたスタートアップのアイデアや技術が北海道の豊富な実証フィールドでブラッシュアップされ、一地域だけでなく日本全体の発展に貢献するスタートアップが現れることを目指して、今後も連携した取組を進めていくことができればと思います。
*AI北海道会議は北海道と札幌市の連携のもと内閣官房により設置されたもので、道内179市町村が企業と連携し、AIなどの未来技術を活用して地域課題解決とイノベーション創出を目指すとともに、規制改革等の提案を発掘して、国のデジタル行財政改革会議等で解決すべき論点に繋げ、地域活性化と経済成長を目指す取組
スタートアップ北海道:トップページ - STARTUP HOKKAIDO
お忙しい中ご対応いただきましたこと、重ねて御礼申し上げます。
意見交換を終え、北海道庁敷地内にある重要文化財・赤れんが庁舎についてご説明いただきました。
赤れんが庁舎は北海道の開拓政策を進める拠点として明治21年に創建されましたが、火災で一度全焼しました。その後、火災からの復旧工事(明治44年)や復原改修工事(昭和43年)を経て、令和元年から50年ぶりとなる大規模改修工事が進められています。
改修後は、2階が北海道に関する遺産や歴史、文化を紹介するフロア、1階が道内179市町村の魅力発信や飲食・物販を行うフロア、地下1階が北方領土や樺太の関係資料を展示するフロアとして、国内外に向けた「北海道の歴史文化・観光情報の発信拠点」として生まれ変わる予定です。
リニューアルオープンは令和7年7月25日を予定しています。ぜひ皆様もリニューアルした姿を見に行かれてはいかがでしょうか。
赤れんが庁舎:北海道庁旧本庁舎(赤れんが庁舎)改修事業ポータルサイト - 総務部イノベーション推進局財産課
続いて、札幌駅の一駅隣にある桑園駅から徒歩8分の場所に立地するエア・ウォーターの森を視察させていただきました。
こちらは、産業ガス・エネルギー・医療事業を基軸に北海道で事業を展開するエア・ウォーター北海道株式会社が令和6年12月にオープンしたばかりのオープンイノベーション施設です。
北海道で最大の木造建築とのことで、道産カラマツを100%使用して建てられています。
▼道産木材を使用した建築物としてHOKKAIDO WOOD BUILDINGに登録されています▼
エア・ウォーターの森は、北海道内の課題解決の拠点になることを目指して誕生しました。
北海道は、人口減少や高齢化が進むとともに、それに伴う経済活動の縮小や公共サービスの低下などの社会課題が全国に先んじて顕在化しています。
こうした中、道内各地の課題を広く収集し、その解決に向けた取組を進めるため、企業、大学などの研究機関、金融機関等の様々な主体が連携し、新たな発想・協働によって地域課題解決に貢献するイノベーションや新しい価値を生み出すことが目的です。
施設内には、一般の方も利用できるレストラン、150名が着座で収容できるホール、ウェットラボや個室、コワーキングスペースなど、様々なニーズに対応できる設備が用意されています。利用者の交流を促す様々な工夫も施されており、極力壁を設けない作りなどは、利用者同士の心理的障壁も取り除き、自然とオープンな交流が生み出されることに寄与しているかのように感じました。
官とは異なる視点を持つ民の主導で運営されているからこそ、官では手の届きにくいニーズに対してもよりきめ細かな対応が可能になると考えられます。北海道におけるスタートアップの更なる盛り上がりにもつながると思いますので、我々行政職員にとっても非常に勉強になる視察となりました。
お忙しい中ご対応いただきありがとうございました。
エア・ウォーターの森:札幌市桑園エア・ウォーターの森 | エア・ウォーター北海道株式会社
HOKKAIDO WOOD BUILDING:HOKKAIDO WOOD BUILDING - 水産林務部林務局林業木材課
最後に札幌大通公園に寄り道し、さっぽろ雪まつり1週間前の雪像の様子を見に行きました。
近くで見ることはできませんでしたが、想像を遥かに超える大きさの雪像は、離れていても大迫力でした。
製作途中だからこそ、その時にしか見ることのできない姿を楽しみに、あえて本番前に訪れる方もいるそうです。
本当はもっと見て回りたかったのですが、途中で吹雪が強くなってきたので、地下道に潜って帰途につきました。
さっぽろ雪まつり:さっぽろ雪まつり公式サイト
これでレポートを終わりにしようと思いましたが、新千歳空港で北海道と言えばの海鮮丼をいただきましたので、せっかくなので最後に紹介して締めさせていただきます。
今回の訪問では、意見交換、現地視察ともに大変有意義な訪問となりました。
東京都は、全国各地との共存共栄を目指し、引き続き幅広い分野で連携を進めていきます。
次回の訪問レポートもお楽しみに!