東京都では、東京と他の地域が、それぞれの持つ力を合わせて、共に栄え、成長し、日本全体の持続的発展へとつなげていく「共存共栄」を目指しています。
そのために、東京都では、東京だけでなく他の地域の発展にも結びつく様々な施策に、各自治体と協力して取り組んでいます。その取組の一環として、全国の自治体へ直接訪問させていただき、東京都との連携や政策全般にわたる意見交換を積極的に行っています。
12月23日(月)に群馬県を訪問させていただきましたので、その様子をご紹介します。
群馬県庁のある前橋駅には、新幹線の停車駅である高崎駅でJR両毛線に乗り換え、計約1時間40分程度で到着します。
今回は、意見交換前に昼食をいただきました。
昼食に選んだのは、群馬県民に愛される「登利平」の「鳥めし」!
県民なら誰もが知っている有名なお弁当とのことですが、今回はお弁当ではなく店内でいただきました。
鳥めしは、白いごはんの上に、醤油ベースのたれが絡んだ薄切りの鶏肉が敷き詰められています。
鶏肉はもちろん、タレが絡んだご飯もとてもおいしかったです!
▼登利平の「鳥めし 松重」。鶏むね肉と鶏もも肉が乗っています▼
鳥めしをいただいた後は、前橋駅前のtsukurun GUNMA CREATIVE FACTORY(以下「tsukurun」とします。)を視察させていただきました。
tsukurunは、小中高生という若い世代を対象に、デジタルクリエイティブに特化した人材を育成していくために群馬県が設置した全国初の施設です。
ここでは、「習うより慣れよう、学ぶより遊ぼう」というコンセプトのもと、プロが使う最先端のデジタル機材やソフトウェアを使うことができ、遊んでいたらいつの間にか技術とクリエイティブが身に着く場所を目指して運営されています。
また、外部講師を呼んでのイベントも多数開催しており、著名なプロデューサーやクリエイターなどと直に接することもできます。
さらに、ポイントを貯めるとステップアップできるバッジシステムや年に2回実施するデジタルクリエイティブコンテスト、体系的にスキルアップできるように作られたクリエイティブクエストなど、子供たちにとって心が折れやすい創作活動でもモチベーションを維持できるような仕組みも考えられているとのことでした。
tsukurunでの取組みの成果も既に現れており、令和6年度に開催された全国の小学生のプログラミング大会では、tsukurun在籍の子供が日本一に輝きました。すごいですね。
令和6年6月には、群馬県桐生市に「tsukurun KIRYU」というサテライト施設がオープンするなど、今後も取組みを群馬県内に幅広く展開するべく検討を進めているとのことでした。
tsukurunの入るビルには有名なIT企業やアニメ制作会社も入っており、子供たちにとっては、tsukurunで学んだ技術が実際に使われている様子を直に感じることができます。
tsukurunでの学びが将来に直結し、群馬県でデジタルクリエイティブ人材として活躍していくことを意識するきっかけになることと思います。
▼tsukurun内部。掛けられている作品はすべて通う生徒が作成したもの▼
デジタルクリエイティブ人材を育成するために群馬県が行う取組みは、これだけに留まりません。
令和7年夏頃には、アルメニアの中高生向け教育機関TUMOセンターを高崎市に誘致して、「TUMO Gunma」を開設する予定です。
TUMO Gunmaは中高生が無料で利用できるデジタルクリエイティブ人材育成施設で、アジアで初めてTUMOセンターの育成プログラムが導入されます。
TUMO Gunmaは、世界標準のプログラムを通じて多くの子供たちが学べる機会を提供し、初級程度の能力を中級に引き上げることを目的としています。
一方でtsukurunは、とっかかりとしての小学生段階から、マンツーマン教育などを中心として突出した人材を育成できることがひとつの特徴です。
さらに、これら性格の異なる二つの施設に加え、大学生世代以上の教育機関として、デジタルクリエイティブスクール(仮称)設置の検討を始めるということも発表されたところです。
これが実現すると、小学生から大人まで一気通貫した人材育成が可能となり、デジタルクリエイティブ人材の育成が大きく前進することになると考えられます。
今後も、群馬県の動きに注目していきたいと思います。
tsukurun GUNMA CREATIVE FACTORY:https://gunma-tsukurun.jp
TUMO Gunma:https://www.pref.gunma.jp/page/643539.html
tsukurunを後にし、バスで群馬県庁へ向かいます。
バスを降りると、目の前には群馬県庁舎が!
群馬県庁舎と言えば毎年お正月に行われるニューイヤー駅伝のスタート・ゴール地点でもあります。
テレビで観たことはありましたが、実物は想像以上の大きさでした。
県庁内に入り、意見交換です。意見交換は、知事戦略部の皆様にご対応いただきました。
お忙しい中、お時間をいただき誠にありがとうございました。
今回は、東京都が実施する連携事業をご紹介するとともに、群馬県が進める重点施策等についてお話を伺いました。
1つ目は、「多文化共生・共創社会」です。
製造業が盛んな群馬県では多くの外国人が活躍されていることから、多文化共生だけでなく「共創」というキーワードも入れた「多文化共生・共創推進条例」を制定して取組みを進めています。
例えば、多文化共創のロールモデルとなる事業者を認証する群馬県多文化共創カンパニー認証制度や、日本語学習を支援する「ぐんまで日本語!プロジェクト」、夜間中学の開設など、様々な国籍や世代の方が学べる環境を作り、誰もが活躍できる多文化共生・共創社会の実現を目指して取組みを進めているとのことです。
2つ目は、「デジタル・クリエイティブ産業」です。
群馬県の山本知事は「人の行動変容を起こすのはエンタメ」という考えを持っており、ITとエンタメ産業を組み合わせた産業を作ることを目標に取組みを進めています。
その中でも特に、デジタル・クリエイティブ産業に力を入れており、先に視察したtsukurunや令和7年夏に高崎に開設予定のTUMO Gunmaもその取組みの一端となります。
その他、ロケ誘致にも力を入れており、Gメッセ群馬というコンベンションホール内に日本最大のグリーンバックを作ってロケの誘致を行うほか、各界に対して知事によるトップセールスも行われています。
県庁でのロケもよく行われるそうで、地上波のバラエティ番組でも群馬県庁が取り上げられるなど、積極的に群馬を売り出しているとのことでした。
3つ目は、「群馬モデルの発信」です。
例えば、県営水力発電所による「温室効果ガス排出量ゼロ」の電気を県内事業者へお届けする「地産地消型PPA(群馬モデル)」や、スマホひとつで目的地までのルート検索から、予約、決済までの手続きを一括で可能とする交通系WEBアプリケーション「Gunmaas」を広げることで県全体の交通の利便性向上を図るなどの取組みを推進しています。
加えて、「ぐんまちゃんのブランド化」としてアニメ制作などを行い、ファンを増やすことで観光誘客・県産品販路拡大等につなげる取組みも進めています。
こういった新しい取組みの背景には、自動車産業以外も強化して魅力的な産業を作ることで、若者や女性の県外流出を少しでも防ぎたいという考えがあるとのことです。
特色ある取組みの数々を伺うことができ、都も学ぶことが多いように感じました。
この後は、32階に移動し、動画・放送スタジオ「tsulunos」と官民共創スペース「NETSUGEN」を視察させていただきました。
まずは「tsulunos」です。
tsulunosは、県職員自らスタジオを利用して動画の「企画」「撮影」「編集」を行うことができるよう、令和2年に設置されたスタジオです。
tsulunosという名称は「鶴」の「巣」に由来し、「鶴」が舞っているような群馬県の形と、様々なアイデアや情報を温め孵化させる「巣」をイメージしているとのことです。
スタジオの外観も鳥の巣を模したデザインになっており、開放的に感じる大きなガラス面に加え、木の温もりも感じられるデザインでした。
▼外から見たtsulunos。公開された状態で収録が行われます。▼
スタジオを活用しての撮影等のほか、機材を持ち出してロケに出向くこともあるようで、職員が直営で運営しています。
県庁内の様々な部署に利用され、県内市町村にも無料で貸し出しているとのことでしたが、驚きだったのは、収録がすべて一般公開されているということ!
カーテン等の目隠しもなく、一般の方の目がある状況で収録が行われますので、撮影に慣れていない職員は大変な緊張感の中で撮影されていることが想像されます。
その分、プレゼンテーションスキルや説明力の向上にもつながると思いますので、私も群馬県庁の職員の皆様を見習わなければと感じました。
▼内部から見たtsulunos。窓の向こうには雄大な関東平野が広がっています。▼
tsulunos:https://www.pref.gunma.jp/page/15792.html
tsulunos-ツルノス-(群馬県公式動画サイト):https://tsulunos.jp
続いて、「NETSUGEN」です。
NETSUGENは「人とつながる、新たなアイデアが生まれる、官民共創スペース」をコンセプトにした取組みで、32階の展望フロアにコワーキングスペース等が広がっています。
業種が異なるユーザー同士でも気軽に交流できるような空間デザインが取り入れられているため、互いに刺激し合うことが期待されています。
交流を生むためにプロフィールボードを設置し、会員同士が自発的に繋がることのできる仕組みもありました。
会員以外も入ることのできる入口付近のスペースは、会員がテストマーケティングできる場になっていました。
これは、アイデアはあっても試す場を探すのが難しいというスタートアップ企業によくある悩みを受けてのものです。
この日も、会員によるお菓子の販売のほか、設置されているコーヒーメーカーではハスの葉茶(群馬県館林市に生えている蓮を使用)や地元サッカーチームとのコラボ商品などが販売されており、会員同士の繋がりが随所に感じられる空間でした。
▼入口付近のテストマーケティングスペース。クレーンゲームは、すべて会員の手作りとのことです!▼
また、奥には、会員等がセミナーやイベントを開催できるスペースが広がっています。
イベントの内容は基本的に制限しておらず、ほぼ毎日のように幅広い内容のイベントが何かしら実施されているようです。
一般の方も入ることのできるエリアには、会員であれば無料で使えるデジタルサイネージも設置されており、事業のPRにも活用できるなど、スタートアップ企業の目線に立って考えられており、痒い所に手が届く施設であるように思いました。
さらに、起業や資金調達に関する相談、ビジネスマッチングなどを行う専門のコーディネーターにより、県内の関係機関や地域の事業者等とも連携しながら手厚いサポートを受けることができます。
時間が限られている中での視察でしたが、NETSUGEN(熱源)という名前の通り非常に活気と賑わいが感じられ、この場所から様々な事業のきっかけが生まれることがリアルに感じられました。
NETSUGEN:https://www.netsugen.jp
今回の訪問では、意見交換、現地視察ともに大変有意義な訪問となりました。
お忙しい中ご対応いただきましたこと、重ねて御礼申し上げます。
東京都は、全国各地との共存共栄を目指し、引き続き幅広い分野で連携を進めていきます。
次回の訪問レポートもお楽しみに!